朝…か…
 ベッドから起きあがると、時計を手に取った。
 学校…行かなきゃ
「あ、お兄ちゃん、仕事!」
 時間は七時半。今から朝ご飯を作ってもギリギリ間に合うかどうかの時間だ。
 少女は布団から飛び出すように出たものの、めまいと共に足元がふらついてそのままカーペットに倒れ込んだ。
「いった~い。」
 気づけば部屋の隅に布団がたたんである。兄が一晩中付き添ってくれていたことが見て取れた。
「どうした?」
 おそらく物音で駆けつけたんだろう。兄が勢いよく部屋の扉をあけ、フライ返しを片手に飛び込んできた。
「大丈夫。それより、お兄ちゃん仕事!私も学校の仕度しようと思って…。」
「バカ。今日は休みだ。医者に行くぞ。点滴してこないとだめだ。」
「なんでー?やだよ。医者!まだ薬もあるもん。」
「蓮華、昨日あんなことしといて放っておけるわけないだろう。」
 昨日…あんなこと…
 蓮華と呼ばれた少女はしばし考える。記憶を呼び起こすのに少々時間がかかった。
「あんなん、いつものことじゃん!医者行かない。学校行く。お兄ちゃんだって、仕事休んだら大変じゃない。」
 彼女のために仕事を休むと、大量に仕事を持ち帰り、遅くまで残務処理しているのを彼女はわかっていた。
「体の方が大事だろ!大体あんなにODして、まともに歩けんのかよ!」
「平気だもーん。」
 先ほどなふらつきなど忘れ、彼女は一回転してみせる。
 いつもこうだ。
 根負けするのは兄の方。
「ちっ、朝飯食うぞ。支度してこい。」
 舌打ちし、荒っぽくドアを締めると兄は行ってしまった。
 怒っちゃったかな?