岩崎 葵(いわさき あおい)

高校2年生の頃
恋なんて無縁だったあたしにも

恋人が出来た。

同じクラスの大人っぽくて
クールで一匹狼みたいな男の子で
だけど彼は優しくて
そんな彼に惹かれて、

片思いだった恋が実った。

付き合い始めて1、2ヶ月は
毎日がドキドキの連続で
彼と会える時間が凄く幸せで
過ぎてくのが早くて堪らなかった。

半年を超えると
お互いに色んな一面を知った。
お互いの癖もお互いの趣味も
色んな事を知った。
いい面を知る反対に、
お互いの悪いところも知った。

それでも自分の中で
彼が溢れていくのが幸せで。

「だいすき。」

「俺も大好きだよ」


彼しかいらない。

そう思っていた。




ーだけど

その幸せはいつまでも
続かなかった。

1年が過ぎてずっと一緒に
過ごしてた日も少なくなってた。

学校も一緒に帰っていたのに
友達と遊んで帰るから。

って、彼は放課後学校に
残る事が多くなってた。

高校は自宅から少し離れていて
汽車通学だったから
あたしは仕方なく早めの汽車で
先に帰っていた。

(今日も一人か、、、)

一人で先に帰ると言っても
あたしの友達も一緒だったけど
心の中で"さみしい"と感じていた。


次の日の朝、
同じクラスの梨乃が
SHRの後に話があるから。と
言っていたので、終わったあとに
廊下で待っていた梨乃のもとに
駆け寄った。

「梨乃、どうしたの?」

彼女はなにやら困り顔で
あたしを見つめると

「、、、最近颯人(はやと)
とはどお、、?」

(?)

黒田 颯人はあたしの彼氏。

「どうって、、んー、、普通かな?」

梨乃のおかしな質問に
眉を寄せて顔をしかめる。

「そっか、、なんでもないかも
しれないんだけどさ、最近
あいつ、駅まで沙奈恵と帰ってるの
よく見かけるんだよね。」

「え!?」

沙奈恵は同じクラスの女の子。
凄く背が高くてスタイルがよく
ホントに女の子。って感じの
あたしの憧れのひとり。

「やっぱり聞いてなかったんだ。。」

梨乃は ふぅ。とため息をついて

「一応、葵には言っておこうと
思ってたからさ。どうするかは
葵次第だけど、あたしいつでも
相談のるからね?」

梨乃は、ぽんっ。とあたしの
頭を撫でた。

(颯人が、、、。)

あたしは胸がズキンと傷んだ。

それでも颯人はあたしへの
態度は相変わらずで。

たしかに考えると冷めてるのかも
しれない。と思わせる。

けれど学校ではあまり
ベタベタしないのが彼のキャラで
二人きりの時は笑ったり
甘えたりしてくれる人。

放課後、あたしの家に来て
二人でいると、頭を撫でてくれたり
抱きしめてくれたり。
キスも、愛してる。って言葉も
あたしにだけくれた。

心も身体も重ねて
この時だけが身近に彼の気持ちも
感じることができた。

(梨乃が言ってたことが本当でも

それでもあたしが、颯人の彼女ー、、)


そう心に言い聞かせて
大丈夫と安心し、彼を信じた。


それでも彼は裏切った。

沙奈恵と仲良しの美結が
あたしと放課後学校に残ってた時。

美結の彼氏は部活に入っていて
終わるまで彼氏を待っていた。

あたしは居残りで一人で
だらだらと居座ってた。

美結と他愛のない話をしてるうち
恋愛の話になって、
美結が階段に移動しよう。と
言って二人で離れた階段の下で
しゃがみこんだ。

「葵、、あたしも彼氏がいるから
彼氏がいる人の気持ちになって
わかるから言うんだけどね。。」

「ん、、?なに?」

「沙奈恵から聞いたんだけど。
颯人くん、沙奈恵の家で遊んでるらしい」

(、、、え?)

あまり聞こえなかったのか
頭が混乱して上手く理解ができなかった。

「沙奈恵は颯人くんのことが
好きなんだと思う。それに颯人くんも
沙奈恵の気持ちに気づいてる。。」

あたしは戸惑った。 
だけど不思議とすぐに受け入れた。

「、、そっか。。そうだったんだ。
最近あたしと一緒に帰ってくれないと
思ってたけど。そういうことだったの。」

はぁ。とため息をつくと
頬に涙がつたった。

「葵、、、。」

「、、あれ、、?
おかしいな、、なんで涙なんか、、」

拭っても拭っても
ボロボロと涙が溢れ出す。

「、、、知ってたの、、っ、
颯人が、、ひっく、、沙奈恵と
一緒にいたこと、、っ。だけど、、
あたしが颯人の彼女だって、、
信じてた、、っ、、それなのにっ、、」

溢れ出す涙と悔しさと、後悔と。
裏切られた悲しみと苦しみが
大きいのに、その反対に募る

愛しさと、切なさ。
好きで好きで堪らない。

美結は泣きわめく
あたしの隣で慰めてくれて

しばらく廊下にはあたしの
泣きわめく声が響いた。


そして1週間後。

放課後久々に一緒に
帰れたと思ったけれど、
別れ話を切りだされた。

あたしはすべてを知っていても
それでも別れたくないと言った。

ーでも、、、

彼にもうあたしの言葉は
届くことはなかった。


その時に誓った。

もう何も信じないー

何もいらない。


ーもう二度と

恋はしない。って。