とんとんとんとん… さくさく進む料理作業。 ひらひらと桃色のエプロンを揺らしながら 「男子遅いー!」 ただいま、と同じに元気な声。 「学級文庫の入れ替えにかり出されてしまったのだもの。仕方ないわ」 あっさりとした口調で渢香は胡瓜を切る。 「寮生っていわば便利屋よね」 はぁ、と息をついて味噌を煮溶かす彼女に 「溜息つくと幸せ逃げるよ」 はな が微かに笑ってそう言うと、 「あ、きたきた!帰ってきた!」 美弥渼が窓に向かってそう叫ぶ。