好きな人って……

中田くん。

ここで話すのは恥ずかしい。
もし本人に聞かれたら?

耐えられない!

「帰り話すからさ、今は作業!作業!」

「絶対だからね!!!」

一安心。
美紅には何でもバレるから注意しないと。

「中田くん、ペンとって~」

「ほい、どーぞ」

いいな、美紅は。
あんな風に話したい。

無理だよ、そんなこと。
地味で人見知りな私にできるわけ…

そんな言葉が一瞬で頭の中を走った。

そーだよね…
無理に決まってる。

「木山さん、ハサミ持ってる?」

顔をゆっくり声のする方に向けると
中田くんだった。

私に話しかけてる?
目が完璧にあってるから、私だよね?
これで私じゃなかったら恥ずかしいよ?
いや、木山さんって言ってるから私か。

そんなくだらないことを考えているうちに…

「大丈夫、晴?ハサミいいって吉岡が貸したから」

はあー…まただ。
話せなかった。

ただ一言なのに…。