【完】キミに隠した恋するキモチ。







私って……こういう世界で生きてるんだ。
こんな音を聞きながら生きてるんだ。




「……ほんとだ、なんか集中して聞いてみると不思議だね」




「だろ?この世界って静かなようで静かじゃないんだよな」




「色んな音が重なり合ってるんだね」




こんなたくさんの音が重なり合っている中で、自分の声を聞いてもらえるのってすごく幸せなことなのかもしれない。
こうやって今、成月くんと話せているのもすごく幸せなことなんだ。




当たり前のようで当たり前じゃないんだ。





「……さ、そろそろ昼飯食わねぇと間に合わないな」




「うん、そうだね」




いつも通り、地べたに座ってごはんを食べ始めた。




パンを頬張る成月くんに目を向ける。




成月くんは無表情でなにを考えているのかよくわからないけど、やっぱりこの世界をちゃんと見ていないようで見てるんだ。
私のことも小南のことも紘也のこともお父さんのことも。




成月くんって、すごいなぁ。
私にはそんな器用なこと出来ない。
自分のことで精一杯で、ちゃんと周りを見てるつもりでも全然見れてないもん。