「俺が産まれるときにさ母さんが分娩室に入ってから急に母さんの様態がおかしくなったんだって」
なにも言えない私に成月くんは口を開いた。
「それから親父、医者に俺と母さんの命、どちらかを選べって言われたらしいんだ。時間もなくてはやく選択しないと両方の命がないって言われて……」
話し始めた成月くんの声はかすかに震えていた。
「母さんが……俺が生まれるをすっげぇ楽しみにしてたらしくてさ。親父は……母さんの思いを選んで……俺が生まれたんだって」
成月くんのお父さんは……どんな思いで成月くんの命を選んだんだろう。
きっと、成月くんのお母さんも成月くんも大切で……。
どちらかを選ぶなんて、ツラかったはず。
私なら……選べない。
「俺……たまに思うんだ。母さんの命を取っておけば、親父の苦しみは少しでも軽かったんじゃないかって……親父、後悔してんじゃないかって」
「そんな……」
そんなワケない。
どっちを選んだって、1つの尊い命が失われることには変わりないもん。
「成月くんのお父さんは……後悔なんてしてないよ!成月くんのこと、すごく大事に思ってるじゃん!!」
あんなに自分の体を犠牲にしてまで成月くんに尽くせるのは、成月くんのことをすごく大切に思ってるから……あそこまでできるんだ。



