嘘から始まる、恋物語

高い天井、広いエントランス。
その横に座る案内嬢に、名前を告げると、正面のエレベーターで最上階へ行くよう教えられた。

エントランスといっても、1階がまるまるロビーになっていて、ソファーやローテーブルがいくつも設置されており、そこここで書類の確認や商談をしている姿が見える。

「最上階へは一番左のエレベーターでしか行けませんので…」

丁寧に教えてくれた彼女にお礼を言い、エレベーターに乗り込む。
このエレベーターは使う人が少ないようで、誰も乗ってこない。

『カレン、しっかりやるのよ』

一人をいいことに自分に言い聞かせ、身だしなみをチェック。
事前に渡された書類も目を通す。
しかし、なかなか止まらない。

『…最上階、直通なの…?』

しかも最上階って何階なのよ…、と思っていると、チンとレトロな鈴の音と共に、ドアが開く。