嘘から始まる、恋物語

間もなく電車がやって来て、人々は滑り込むように乗っていく。
自分も遅れないように、足を急がせた。

2つ目の駅で降車、そこから地上に出るために、階段を上る。
まるで迷路だわ、そう思いながら目的のビルへと歩いていった。

スーツ姿のサラリーマンやOLたちが、急ぎ足で行き交う。
チラッと腕時計を見ると、約束の30分前。
余裕はあるのに、この空気のせいで自分まで急かされてしまう。

(このまま行くと20分前には着いちゃう…。あ、いいもの発見。)

目の前にあったのはコーヒーショップ。
バケットサンドとコーヒーをテイクアウトする。
ランチにちょうどいいと購入したが、なんだか都会ぶっているようで歯がゆい。
お釣りを受け取り、ショップを出て時間を確認。

(いい時間になった、さて。)

目的のビルの目の前。
超高層のその建物に、少し気が引けてしまう。
さすがは、大都会の大企業様だこと。
こんなところに、こんな自分が、優良条件で入社できてしまうなんて、今でも信じられない。