彼が何を言っているのかわからなかった。全部とはなんのことだろう。


『…ただの友達だよ?』




「あいつは違うかもしれないでしょ」



立ち止まって言う彼の横顔は寂しそうだった。



『違く、ないよ』



確かに思う点はあった。駿くんは明るくて誰にでもフレンドリーでクラスの人気者。それなのに最近は私に付きっきりだった。




「俺、心配なんだ…紗奈が離れていっちゃいそうで…だから」





ぎゅっと抱きしめられ、震えた声で言う彼に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。




「だから、もう俺以外の男とは話しちゃダメだよ」




“あいつとは目もあわせないで”




嫌だなんて言えなかった。




『わかり、ました…』




もう元には戻れない



Fin