短篇集




下駄箱についてやっと離してもらえた腕は赤くなっていた。



『遅くなったの、そんなに怒ってるの?』




こちらに顔を向けてくれない彼の服の裾をぎゅっと握った。




『ごめんさない』




「あのノートさ、なんなの」



『…これはっ…』




なんて言えばいい?本当の事言う?そんなことしたら嫌われるかもしれないのに…。



でも嘘ついて嫌われるより、いいよね。




『…こんなの気持ち悪いよね』


ゆっくりと振り返る彼の顔はもう見れない。


表紙に、彼の名前と私の名前が書いてあるノートを渡した。




どんな顔して読んでるのかもわからない。





しばらくすると彼は優しい口調で言った。


「嬉しいな」




思いがけない言葉をもらって顔をあげた。



『え…?』




「こんなに想われてるなんて思わなかった」




『気持ち悪くないの…?』




「全然。ちゃんと俺のこと好きなんだなって安心した。ちなみに、さっき怒ってたのはあの男に対してだよ」




俺、嫉妬しやすいんだ。と笑う彼がいとしくて、もっとしてもいいよ、なんて言ってしまった。そもそもこれが間違っていた。