21時15分発名古屋行きの新幹線は
ゆっくりと時間どおり発車した
彼、川野隆也は座る席を探していた
なにしろ急な予定変更だったので
空いている指定席がなかったのだ
指定ではなくとも空いている席くらいいくらでもあると思ったのだが、
どの車両もほとんどが家族連れやサラリーマンで埋まっており、
彼はなかなか自分の座る場所を見つけられなかった
それでも喫煙車両へ入ると、ようやく空席がちらほらと見えてきたので
隆也は入口近くの誰も座っていない二人掛けの座席に近寄り持っていたビジネスバッグを投げ出した
「…!」
しかしそこにはもう既に一人の少女が座っていた
背が低いのか、椅子の大きさで彼女が見えなかったのだ
「すみません!てっきり誰もいないと思って…」
隆也は慌てて彼女にのっかった自分の荷物を手にとった
(俺なにやってんだよ!いくら動揺しているとはいえ誰かいないか確かめるべきだった!)
だが彼女はあまり気にした様子もなく、窓の外の夜景を見つめている
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