悪戯な笑顔を浮かべる矢野に一瞬目を奪われる――。

 言いたい事を言うと、再び矢野はホームへと歩いて行った。

 大嫌いから嫌い――。

 って、結局嫌いなのかよ!?

 思わず心の中で突っ込むとため息が漏れた。

 ホント、嫌なオンナ……。

 そう思いながら、矢野とは反対の改札口に向かう。

 ムカついている筈なのに、足取りが軽やかなのは何故だろう。

 その理由は電車に乗り、窓に映る自分の顔を見てわかった。

 何ニヤついてんだ……俺は……。