矢野さん

「矢野さんなんで断るの?一緒に行ってきなよ」

「ちが――!」

 慌てて否定しようとする矢野の手を取る。

「そうだよ!怪我のお礼をしてくれるんだろ?だったら何も要らないから映画一緒に見に行こう!」

「は!?」

「橘くんもこう言ってるだしいいじゃん。これに橘くんのアドレス書いて」

 はいっとポケットから祐子さんが紙とペンをテーブルに置く。

 俺を睨む矢野の痛い視線を感じながらアドレスを書く。

 俺だって矢野となんかアド交換したくねーよ!

 でも……正直ちゃんとお礼が言えてなかったし。

 土曜日会った時にお礼が言えたらいいな……。

 アドレスを書き終わると祐子さんがその紙を矢野に渡した。

「仕事終わったらメールさせるね。じゃあお大事に」

 そう言うと祐子さんは部屋を出ていった。

 矢野はハァー!と苛立ちを込めた大きな溜め息を吐くと、処置台を押して木村さんの所に行った。