矢野さん

 昼食が終わると祐子さんと担当医が来て抜糸をしてもらった。

 新しくガーゼを祐子さんに換えてもらい服を着ていると「あっ」と祐子さんが何かを見つけた。

「どうしたのこれー!まだ上映されてないよね?!」

 サイドテーブルに置いたチケットを輝く目で見ている。

「ああ、吉澤に貰ったんだよ。映画の試写会チケット」

「え?!試写会?!うそー!いきたーい!」

 祐子さんはチケットを見る目を益々輝かせた。

「じゃあ良かったら俺と行く?一緒に見に行く人いないし」

 そう言うと「本当?!」と輝かせていた瞳を俺に向けた。

 下心があって祐子さんを誘ったつもりはない。

 ただ純粋に行きたがってる姿を見て誘ってみた――。

 案の定、跳ねて喜んでいた。

「いつなの?この試写会」

「確か今週の土曜」

「え?!」

 チケットを持ったまま祐子さんが固まる。

「あたしその日仕事だーショックー……」

 さっきまでのハイテンションが嘘の様に笑顔が消え、残念がる姿に思わず笑ってしまった。

 ……そうか仕事かぁ。暇だし俺一人でも行ってみるか……。

 そう思った時。

「あ、矢野さーん。これあげる」

 木村さんの点滴を替えにきた矢野に祐子さんがチケットを渡した。

 ――え?!