矢野さん

 ドクン!ドクン!と強く動揺した鼓動に真っ白な頭の中に唯一浮かんだ一つの文字。

 それは――「死」

 人が死ぬ――。木村さんが死んじゃう。

 
 怖い……怖い……!

 血を吐き苦しむ姿を見て体がガタガタと震え出す。

 人が血を吐き苦しむ姿がこんなにも怖いものだなんて――。体が震える――。

 矢野が必死に対応する姿を青ざめた顔で見つめる事しか出来ない。

 あの時――。

 あの通り魔に襲われた時、矢野の泣いている声が聞こえた。

 矢野も怖かったんだろうか……俺が死ぬのではないかと。

 泣きながらも恐怖心と闘いながら必死に応急処置をしてくれていたのだろうか――……。

 もし矢野が刺されていたら――、俺はきっと助けを叫ぶばかりで何も出来なかっただろう……。

 怖い――。本当に……怖くて怖くて堪らないんだ。

 目の前で人が死んでしまったらと思うと……。