「あのさ……他にないの?」


「え?呼び名?」


 机を拭いている矢野が顔をあげる。


「うん……出来れば別のがいいかな」


「あるよ」


 そう言うと、矢野はニコッとわらった。


「ど、どんなの?」


 ハッピーよりマシな名前を期待して、思わず少し身を乗り出す。


「はるる」


「……」


 ニコニコ笑って言う矢野。


 あぁー……そうか……矢野は少しおバカなのか……。


 ハ、ハハ……と苦笑いを浮かべながら、後ろの壁にもたれ掛かった。


「はるるって可愛くない?――あっ!私も遥だから、はるるだ!ねーねー!お互いはるるって呼び合おうよ!」


 嬉しそうに笑いながら言う矢野に頭が痛くなる。