矢野さん

 ポケットからジュエリーボックスを取り出し、テーブル下で握り締めると矢野を再び真剣な目で見る。


「ここで初めて会った時の事覚えてる?」


「うん……。私初対面で嫌いって言っちゃったんだよね……」


 矢野はそう言いながらバツが悪そうな顔をして笑う。


「そう。正直驚いたしメッチャムカついた。でも……そんな俺達が惹かれ合って、今付き合ってるのって不思議だよね」


「……そうね」


「俺思うんだ。出逢いは幾らでもあったのに、別れを迎えて来たのは矢野さんと逢うためだったのかなって……」


「え……?」


 矢野は少し驚いた顔をして俺を見つめる。


「俺は君に出逢えて良かった。自分も知らなかった自分に出会えたし、自分自身成長して行くようで嬉しいんだ。矢野さんにとって俺もそんな存在で居たい……。そして、あり続けたい……」


 真っ直ぐ見つめる先には、矢野の黒く澄んだ瞳。その綺麗な瞳で、今どんな想いで俺を見つめているんだろう……。


 俺の想いは矢野に届くだろうか……。