矢野さん

 貰っても一緒に行く奴いないんだけどな……。

 そう思いながらチケットを眺めていると吉澤が戻ってきた。

「すまん橘、仕事が入ったから俺帰るわ」

「え?」

「来週からは会社戻れるだろ?またその時に」

 そう言うと吉澤は帰って行った。

 あいつ仕事中にまた来たのか……。

 呆れながら貰ったチケットをサイドテーブルに置き、煙草を吸いに行こうとゆっくり立ち上がった。

 その時、隣の方からうめき声が聞こえた。

 隣の木村さんのベッドはカーテンで覆われて中の様子が見えない。

 悪い夢でも見ているのだろうか……?そう思った時――。

 ゴホッ!と何か吐くような音と共にうめき声が強くなった。

 ――!!

「木村さん?大丈夫ですか?開けますよ?」

 シャッ!とカーテンを開けると苦しそうにベッドに横たわる木村さんがいた。

 そしてその横にはどす黒い血がシーツを汚していた。