矢野さん

「こんばんわー」

 しばらくして1人の若い女性が声を掛けて来た。

 その女性を見て、目を丸くして言葉を失う。

 その女性は白のフリルが付いたブラウスに、腰に茶色のベルトをして黒色の膝丈のフレアスカートを履いている。手には店に入って脱いだのか、グレーのコートと鞄を持っていた。

 ボブの黒髪は少し巻いてあるのか毛先がフワッとしていて、小顔で目が大きいのと反対に小さくて愛らしい口元をしている。

 メッチャ……可愛いんですけど!!

 そう思ったのは俺だけではなかった様で、吉澤も赤崎も女性を見たまま固まっている。

「あの……、えっと祐子の友達なんですけど……ここで合ってますよね?」

 返事をしない俺達に戸惑いながら女性が聞いてきた。

「あ、はい!どうぞ!」

 何故か勢いよく吉澤は椅子から立ち上がり、席へ促す。

 おいおい、あいつめっちゃ緊張してんじゃん……。

「お邪魔します」

 っと、頭を少し下げ奥の席へその女性は座った。向かいに座る吉澤は緊張した顔をしている。