矢野さん

 驚いて顔を向けた俺に矢野は何か勘違いしたのか――。


「気に……入らなかった?」


 と、不安そうな顔で聞いてきた。


「いや!そうじゃなくて……このブランド高かったでしょ?……無理させちゃったのかなって……」


 俺がそう言うと、矢野はゆっくり首を振った。


「無理してないよ。橘さんに似合うなって思ったのが、たまたまそれだったから買っただけだよ」


 そう言うと、ふわっと優しく俺に微笑む。


 その顔はブランドにこだわったと言うより、本当に俺に似合うのを選んだと言っている様に見える。


「ならいいけど……。ありがとう。大事に使うよ」


「うん」


 俺がそう言うと、矢野は笑顔で頷いた。