矢野さん

 自分の気持ちが悟られない様「そっか」と、素っ気なく返事をすると再び前を向いて歩いた。


 矢野が見たがっていたイルミネーションをゆっくり見て回ると、近くの空いてあるベンチへ二人腰を下ろす。


 繋いでポケットに入れていた手もベンチに座る際に、自然にお互いが離していった。


「こんなに綺麗なイルミネーション初めて見ました」


 イルミネーションに目を向けたまま矢野が嬉しそうに言う横顔を見つめていると――。


「あ……」


 矢野の綺麗な黒髪にちらほらと雪の結晶が落ちてきた。


 矢野も目の前に落ちてきた純白の小さな雪に気づくと、手の平を上に向け夜空を見上げた。


「雪だ……」