矢野さん

 クリスマスということもあり、周りはカップルや家族連れで多くの人が来ている。


 イルミネーションされているからと言っても夜のため、流石に遠く離れると顔がわからない。


 しかも矢野はテンションが上がっているのか、先々進む。

 ったく――。迷子になるだろ。


 そんな矢野に少しイラつきながらも矢野の右横に並ぶと、矢野の右手を強引に左手で繋いだ。


 驚いた矢野が俺を見上げるのがわかったが、気づかないフリをして前を向いたまま歩く。


 矢野の右手と繋いだ左手を、そのまま自分のコートの左ポケットに入れた。


「手、冷たい」


 歩きながら前を向いたままそう言うと、繋いだ手に力が込められた。


 ――!?


「温かい……」


 呟くように矢野が言う。前を向いているから矢野の顔は見えないけど、矢野の緊張した雰囲気が伝わってくる。


「……」


 は……恥ずかしい……。なんだこの甘い雰囲気は!?


 ヤバイ!顔がにやける……。


 必死にポーカーフェイスを保とうと顔に力が入る。