「じゃあ、またね」


 祐子さんは手を振りながら帰っていった。


 やっぱり赤崎が言ったように、俺に連絡しにくかったんだろうか……。


 それとも、俺に幻滅したか……。


 はぁっと小さなため息を吐くと、白い吐息が冷たい風に流されて行く。


 すると――。


「橘……さん?」


 ハッと声がした方へ顔を向けると、病院から出てきた矢野が驚いた顔をしてこっちを見ている。


 ゆっくりベンチから立ち上がると、茫然と立ったままの矢野に近づいていった。


 矢野の瞳は何処か怯えている様にも見える。


「なに……してるんですか?」


「矢野さん待ってた」


 そう言うと、矢野の顔は不安気なものへと変わる。