矢野さん

「とりあえず……見て回りますか?」


 俺の様子を窺うように聞いてくる矢野。


「その前に煙草吸いたい」


 何故か矢野を思うように見れず目をそらして言うと、二人で煙草が吸える場所を探した。


 灰皿が置いてあるベンチを発見すると二人腰を下ろし煙草に火をつけた。


 座った二人の間には一人分のスペースが作られている。


「……」


「……」


 お互い会話もなく時間だけが過ぎる。


 なんか話した方がいいよな?


 気まずい雰囲気に段々焦り始めた時――。


「あの……、先日のアップルパイどうでした?味……」


 膝に手を置いてそれを見つめたまま矢野が聞いてきた。