矢野さん

 祐子さんの後を追って歩き出した赤崎の腕を取る。


「おい。なんで俺が祐子さんに怒られなきゃいけないんだよ。だいたい、何で祐子さんと矢野さんがいるんだよ。それに、どこ行くんだよ」


 睨んで赤崎を見る俺を「まぁまぁ」となだめる様に俺の肩をポンポンと叩いた。


「騙して悪いとは思ってる。だけどこれはお前の為だ」


「はぁ?」


「今の気持ちがわからなくなった橘の為に、今日は一日矢野さんと遊んで気持ちを確かめろ。すぐにじゃなくても何回かまた会えば自分の気持ちもはっきりするだろ?」


「余計なお世話だ。人の世話より自分の心配しろよ」


「こうでもしなきゃお前は矢野さんと会わないだろ。橘はいつも面倒な事から逃げる。矢野さんに対する気持ちが過去の物に変わりつつあるのか、ちゃんと確かめろ。今更だとしても好きだといってくれる矢野さんと、ちゃんと向き合え」


 初めて見る真剣な表情の赤崎に思わず言葉を無くす……。