矢野さん

 声がした方に顔を向けると、手を振る祐子さんの姿があった。そして矢野の姿も――。


 やられた……。


 赤崎の様子が変だったのはこの事だったのか……。


 ノコノコ付いて来た事を酷く後悔する。


「騙したな?」


 ジロッと赤崎を睨むと俺からわざとらしく目をそらす。


「もー遅いよ橘君。10時に集合って聞いてないの?」


 祐子さんが少し怒り口調で小走りでやって来た。


 その後ろを矢野も小走りでついて来る。


「いや、10時集合も何も……俺何も聞かされてないんだけど……」


「言い訳はいいわ。後で聞いてあげる。行きましょ」


 そう言うと、祐子さんは振り返って歩き出した。