矢野さん

「自分が最低なのわかってます……今更こんな事を言う自分も……。でも、もう自分の気持ちに素直になりたい。気づかないフリはもう出来ません……。私、橘さんが好きです」


 涙を必死に堪えた潤んだ瞳が真っ直ぐに俺を見つめる。


 その視線があまりにも熱くて……俺の掻き乱された気持ちはさらに熱を帯び掻き回される――。


「意味わかんねー……。矢野さん好きな奴いるんじゃないの?」

 握りしめていた右手を更に力強く握りしめる。


「……あの時はそう思ってました。でも本当は橘さんの気持ちを隠すために必死に好きになろうとしてただけで――」


「ふざけんな――!!」


 必死に弁解をする矢野に声を荒げた。


 その時、体をビクつかせ酷く驚いた矢野の顔は強張り、真剣な瞳から脅えた瞳に変わる――。