矢野さん

「橘さんは祐介に似てたんです……。嘘の笑顔を浮かべて心にもない事を言う橘さんが、嫌いな祐介と重なって見えて……。だから必死に橘さんを嫌いでいようとしてました……。また漬け込まれないようにって気を張って……」


矢野の言葉に目を見張る。


「でも……わかってたんです。祐介と橘さんは違うって……。分かってたのに、橘さんを前にすると素直になれない自分がいて……。だけど、そんな私に橘さんは優しく接してくれた……。いろいろ助けてくれた。いつからかわからないけど……徐々に橘さんに惹かれてる自分がいる事に気付いたんです」


「はぁ?……ちょっと待ってよ」


 矢野の言葉に思わずしかめっ面で矢野を見る。


「矢野さんが俺を嫌ってたのって元カレに似てるからって事?」


 そう言うと、矢野の真剣な瞳が微かに一瞬怯んだ様にも見えた。


 そんな矢野を見て思わず冷笑する。


「……はっ。マジかよ……そんなくだらない理由で俺嫌われてたの?」


「……ごめんなさい……」


 矢野は瞳に涙を浮かべながら呟くようにそう言った。