矢野さん

「今何て言った?俺の事好きって聞こえたんだけど……」


「はい。私、橘さんが好きです」


 恥ずかしがる事もなく真剣な顔で矢野がそう言った。


「……冗談でしょ?」


「冗談じゃありません。本当です」


 顔色を一切変える事もなく、まっすぐな瞳で俺を見つめる。


 そんな矢野に対し、思わず箱を持っていない右手を握りしめた。


 なんなんだよ……。訳わかんねー。そんなの信じれる訳ないじゃん……。どんだけ人の気持ち掻き乱せば気が済むわけ?


 それがもし本当なら……なんで今更そんな事言うんだよ……。


「マジでやめてよ。からかってるんだろ?」


「違います!私本当に橘さんが好きです!」


 なかなか俺に気持ちが伝わらないもどかしさからか、矢野は更に一歩俺に近づいて俺を見上げる。