「橘。飲みに行こうぜ」


「おう」


 仕事が終わると赤崎と一緒にいつもの居酒屋へ。


「なぁ、お前祐子さんとどうなってんだよ。まだ付き合わねーの?」


 そう言うと、注文したビールを一口飲むと赤崎を見る。


「えー?うーん……付き合いたいんだけどねー。まだそこまで発展してないって言うか」


「本当か?コンパ行けなくなるからとかじゃないのか?」


 疑いの眼差しで赤崎を見ると、「ハ、ハハ……」と苦笑いをしてビールを飲みだした。


 図星か……。分かりやすい奴め。


 呆れ気味にそう思っていると――。


「あのー……。もしかしてこの前お会いした方じゃないですか?」


 不意に、近くで男性の低い声がして思わず顔を上げた。