こんな事にならないと気づけないなんて……。


 今更橘さんを好きなんて……言えるわけない。


 でも――でも、もう遅いかもしれない……それでも、また私を見てもらえる様に頑張ってみてもいいかな……。


 私に嫌われてるって分かってても、ちゃんと橘さんは私と向き合ってくれたから。


 私もどんなに酷い態度とられても、逃げない――。橘さんとちゃんと向き合うよ。


 だから――頑張ってもいいかな……。

 今度は私からちゃんと気持ちを伝えたいから――……。


 そう決心すると、暫くして鞄からハンカチを取り出し、涙を拭いた。


 意を決して顔上げると、黒田さんがいなくなった方向に背を向けしっかりとした足取りで歩きだした。