矢野さん

 信じられない――。


 仮にも付き合って欲しいと言った人が私を置いて逃げるなんて……。


 もし――……。


 もし――橘さんだったら……きっと私を置いて逃げるなんてしないと思う。


 私にまで危害が及ばない様に穏便に済まそうとしてくれる……。前みたいに守ってくれるはずだもの。


 絶対橘さんなら!


 きっと――!


 そこでハッと我に返る。


 頬を伝う雫。自分でも気づかぬうちに涙を流していた事に。


 そして――隠していた自分の気持ちに気付いた事に。


 バカだ……。私……。


 何を見ていたの?祐介の時も、黒田さんも……。表面的な事ばかりしか見てないじゃない……。


 笑顔がいいから?連絡をマメにくれるから?


 そんな人……いくらでもいるじゃない!!