矢野さん

 え?










 え……なに……?黒田さんは……逃げたの?


 私を置いて……?


 突然の事で茫然と立ち尽くしていると――。


「ブッハハ!マジかよアイツ!女置いて逃げやがった」


「ダッセー!超だっせぇ!」


 男達がゲラゲラ笑う声が聞こえる――。


 その笑い声も遠くから聞こえているようで、ただ立ち尽くす事しか出来なかった。


「あー面白いの見た。もう行こうぜ」


 そう言って男達は私を見て肩を震わせ、笑いながら離れて行った。


 足も動かなくて、顔も黒田さんがいなくなった方向から逸らせなくて……。


 行き交う人の流れの中でただただ――立ち尽くす。