矢野さん

「ほら。早く出せよ金!手遅れになったら10万じゃ済まさねーぞ!」


 動かない黒田さんに段々男性も苛立ち始めた。


 その時――


 え……?


 誰かが私の背中をグイっと押した。


 思わず男達の方へ一歩前に出る。


 背中を押した人物にゆっくり顔を向けると、目を見張る。


 くろ……だ……さん?


 青ざめた顔した黒田さんが私の背中を押して、私を見ることなく震える声で言った。


「こ、この子看護師だから見てもらって。俺用事思い出したから、ごめんけど帰るよ!じゃあ!」


 そう言うと、黒田さんは足早にこの場を去っていった。


 その様子を目を丸くして見つめる。


 男達も唖然と黒田さんが去っていった方へ顔を向け固まっている。