矢野さん

 じっと何処かを見つめて何も言わない私にしびれを切らしたのか、祐子さんが椅子から立ち上がった。


「もういいよ。なんか矢野さんって橘くんを嫌いでいようとするのに必死な感じ。見てて気持ち良いものじゃないわ」


「――!?」


 そう言うと、祐子さんは「先に行くね」と休憩室から出ていった。


 思わず膝に置いた手をギュッと握りしめる。


 祐子さんには分からないのよ……。


 私の気持ちなんて誰も分からない――。


 どうしたらいいの?あの時、橘さんになんて言えばよかったの……?


 好きって言われて信じられない気持ちが大きかった――けど、その気持ちに隠れて微かに見えた気持ちがあった気がする……。


 あれは――


 私の本心……?


 わからない……わからないよ……

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