矢野さん

「別に苛立ってなんか……」


 目を逸らしたままそう答えるとーー。


「まえに、矢野さんがお金取られてるのを橘君達から聞いたの。その時橘君、凄く怒ってた。花火大会の時も、我を忘れてクズ男ぶん殴ってて。自分の事の様に怒ってる橘君見て気付いたのよ。矢野さんの事好きなんだろうなって」


 祐子さんの言葉に思わず手を握りしめる。



「好きじゃなきゃあんなこと出来ない。……私の価値観押しつける訳じゃないけどさ、橘くんっていい男だと思うよ。中身も外見も。前に言ってたけど矢野さんは本当に橘くん嫌いなの?」


 普段はサバサバして深く追求してくる事なんてないのに……。


 鋭い所を突く――。


 祐子さんから視線を落とし唇を噛み締めた。


「……感謝はしてます。とても……。でも好きじゃありません」


「なんで?」


 ――!?


 なんでって……。