矢野さん

「橘さん!!」


 ――矢野の声にハッとした。


「橘!!止めろ!」


 殴り続ける俺を後ろから羽交い締めするように、赤崎に腕を掴まれ男から引き離された。


「はぁはぁ――」


 さっきまで聞こえなかった周りの音が聞こえる――。


 俺の息づかい……アイツのうめき声……身体に響く大きな花火の音……。


 矢野と祐子さんが走ってくる下駄の乾いた音……。


「はぁ……はぁ……」


 「うっ……」と、よろめきながら口から出た血を拭いゆっくりアイツが起き上がる。


 腫れた顔を歪ませゆっくり立ち上がり、ペッ!と路上に唾を吐くと俺を睨む。