矢野さん

 そんなあからさまな態度を取らなくても……。


 俯いた矢野の顔にどこか赤みがある様に思うのは、西日を浴びているせいだろうか――。


「私、クレープ買ってこようかな」


 矢野はそう言って勢いよく立ち上がるとそのまま階段を降りて屋台の方へ歩いていった。


 人混みに紛れ見えなくなった矢野の後ろ姿から貰ったリンゴアメに目を向ける。


 さっきの矢野の態度は胸が痛いが、やっぱり矢野から貰った物は嬉しい……。

 リンゴアメを見つめたままフッと微笑した。


 どれぐらい経っただろうか。15分後に上がると話していた花火も、あと2分で上がるというのに矢野が帰って来ない。


「矢野さん遅いね」


 祐子さんが心配そうに屋台の方を見る。


「俺、ちょっと見てくる」


 そう言って立ち上がると、矢野がいなくなった方へ歩いていった。