矢野さん

「ごめんなさい。浴衣にとまどっちゃって遅くなりました」

 ――!?


 声がした方へ振り返ると、浴衣を着て恥ずかしそうに右耳に髪を掛ける様な仕草をする矢野がいた。


 その浴衣姿に思わず目を見開き息を呑む。


 めっちゃ可愛い……。


 治まったはずの鼓動が再び早く打ちだす――。


 柔らかなクリーム色した生地に濃淡のピンクの花、淡い青藤とピンクでぼかされた蝶模様。帯は綺麗な水色で、髪は低い位置にお団子が結われ薄い水色した花飾りが一つあしらってある。


 矢野と祐子さんが並べば誰もが祐子さんに目が行くだろうが、俺にはもはや矢野しか目に入らない。


 恋は盲目――。今の俺にはピッタリの言葉だ。