矢野さん

「最初は嫌ってたけど……吉澤から貰ったチケットで映画見に行って、それからなんか気になり出して……でも矢野さん俺のこと嫌いらしくて……さっきも冷たい目で俺を見てたのに、先生っとか言う男には嬉しそうな顔して……それで……なんかへこんだ」


 徐々に小さくなり最後はボソボソっと呟く様になってしまった。


 だが夜11時を回った時間帯は殆ど人通りもなく、車もあまり走っていなかった為、二人にはちゃんと伝わった様だ。


「そうか……。それでお前らはへこんでた訳か。――よし!飲み直すか!!」


 吉澤が明るく言うと、円陣を組む様な形で俺と赤崎の肩に手を置いた。


「まだ始まったばかりだろ?恋なんてそんなすんなりいっても面白くないだろ。困難があった方が燃えるってものさ」


 吉澤はニカッと笑うと俺と赤崎に立つよう促す。


「俺がおごってやる!好きなもの食え」


「え!?マジ!?ラッキー!」


 へこんで項垂れていたのが嘘のように、赤崎が目を輝かせて立ち上がる。


「――っ!?」


 切り替え早っ――!!


 立ち上がり吉澤と笑いながら話す赤崎を唖然として見つめる。


 マジでコイツの性格が羨ましい――。

 そう思うと、引きつった笑顔を浮かべた。