あと10分くらいは家に着かないだろうか。 先輩と言い合ってから(私がほとんど一方的に言っていたが)少したった。 私は、夏の訪れを漂わせる賑やかな町の中を一人歩いていた。 渡ろうとしていた信号が赤になった。 あーあ。ついてない… しょうがなく待つことにした。 違う道でも帰れるけれど、坂道が多いから絶対にいや。 だったら信号1つ待った方がずっとましだった。 やっと青になる。 渡ろうとしたときだった―― 「凜音?」 後ろから誰かに名前を呼ばれた。 誰だろう… 振り向いたらそこには奏がいた。