「姫!」
まぎれもなく、その声は王子。
会いたくて、でも会えなかった王子。
その王子が今、目の前にいる。
「姫、なぜ湖に来ては下さらないのですか」
王子は息をきらしながら言って、姫を抱きしめた。
姫は困惑した様子で、言った。
「あなたのお妃様に約束したのです。もうあわない、湖には行かない、と」
王子はきょとんとして、姫に言った。
「私の妃?私にはまだ妃はいないが…?」
「え…?あの、一緒にダンスを踊っていた方ではないのですが?」
王子はそれを聞いて、一瞬顔を歪めると「あいつか…ッ!」と呟いた。
王子と姫が抱き合っているとき、会場のドアが勢いよくあけられた。


