貴方の心フル受信

「夏、どうしたの?」

「え…?」


 靴箱のところで未亜に声をかけられた。



「なんか、泣きそうな顔してた」





 『ズキン』とまた胸が痛んで、奴の顔が浮かんだ。



「別になんともないよ?」

 できるだけ元気に聞こえるように。

 できるだけ頭の中から奴を追い出すように。

 私は明るく言った。


「そう…」



 まだ心配したような顔をしている未亜に「帰ろうよ」と声をかけた。





 未亜はもうそれ以上なにも聞いては来なかった。