女の子の前には、月の光に照らされてほのかに輝く、一本の道が広がっております。



女の子はおそるおそる、その道に足を踏み入れました。



すると突然、道から暖かな光の結晶が吹き出し、女の子を優しく包みながら輝きました。


女の子が一歩進む度に光の結晶は吹き出し、輝きながら宙を舞って、再び道の輝きとなります。



そうしてしばらく歩いていくと、目の前の道がふわっと光になって空に舞い上がり、女の子の前に降ってきて小さな家となりました。



すると中から、先程の小人が出て来て言いました。


「ようこそ、お日さまパーティへ。

さあ、中へお入りなさい。」



女の子が言われるままにその小さな家へ入ると、暖かな陽の光に包まれたお花畑が、辺り一面に広がっておりました。


何処からともなく吹いて来る風が、色とりどりの花びらと一緒に、優しい匂いを運んで来ます。



「どうだい、素晴らしい所だろう。」


後ろで扉を閉めながら、小人が言いました。



「ええ、とっても。小さな家の中とは思えないわ。」



女の子がそう言うと、小人は満足そうに微笑みました。


「そうだろう。

何と言っても、全て貴女さまのために用意されているのだから。」



それを聞いて女の子は不思議に思いました。


「私のため…?」



小人は

「しまった」

という顔をすると、そっぽを向いてしまいました。



そこで、女の子はずっと気になっていることを聞きました。


「ところで、お母さんは何処にいるの?」


女の子は、母のことが心配でたまりませんでした。

パーティに来ていると聞いたのに、母がいる様子は全くありません。



「そうでしたな。」


小人は思い出したようにそう言うと、お花畑の中に入って行きました。


そしてその中から一際美しい花を一本取って来ますと、お日さまに向かって投げました。



すると何処からともなくミツバチが飛んできてその花を掴み、再び方向を変えて飛んで行きました。



「あのミツバチを追って行きなさい。」



女の子は小人に言われた通り、ミツバチを追っていくと、花畑の奥に扉が見えました。


女の子が扉の前まで走って行くと、ミツバチが降りてきて、女の子の髪にそっと花をつけました。



「ありがとう。」


女の子がお礼を言うと、ミツバチはまた何処かへ飛んで行ってしまいました。



「この先にお母さんがいるのかしら。」


女の子は扉を少し開けて中を覗くと、真っ暗で何も見えません。


入るのを躊躇っておりますと、中から声が聞こえてきました。



「眩しいじゃないか。早く扉を閉めてくれ。」



「ごめんなさい。」


女の子は急いで中に入ると、扉を閉めました。



すると、先程までは真っ暗だと思われた中には、ほのかな月の光が差し込んでおり、しばらくすると全体がよく見えるようになりました。



「まったく、外から入って来られると迷惑なんだよ。」


女の子の足元の土から、もぐらが出て来て言いました。



「ほんとうにごめんなさい。

ところで、ここに私のお母さんはいませんか?」


女の子がもぐらに聞きますと、もぐらはフンと鼻を鳴らして言いました。


「知らねえよ。

そういうことは、この先にいるフクロウにでも聞きな。

大きな木が目印だ。」



「ありがとう。」


女の子はもぐらにお礼を言うと、フクロウの元へ急ぎました。




しばらく行くと、女の子は大きな木の上に小さな家があるのを見つけました。


家から垂らされていた梯子を登り、何とか木の上まで辿り着くと、玄関の扉が開いて、真っ白なフクロウが出て来ました。



「おや、ちょうど良いところにいらっしゃったのう。

どうぞ、中にお入りなさい。」


そう言うと、フクロウは女の子を家へ招き入れました。


「素敵なドレスが出来上がったところでのう。

どうじゃ、着てみないか?」


フクロウは、それは美しい純白のドレスを持ってきて、女の子に差し出しました。



「私なんかが着ても良いのかしら。」


女の子がそう呟くと、フクロウは驚いたように言いました。


「もちろんじゃ。

これは元々貴女さまのために作ったものですぞ。

貴女さまが着ずして、誰が着るのかね?」



「私の…?」



女の子は戸惑いながらも、ドレスを着てみました。


するとドレスから柔らかな光が発せられ、美しい光の粉が女の子の周りで輝きました。



「おお…。」


フクロウはたいそう感動しますと、今度は純白の靴を持ってきて言いました。


「これを履くのじゃ。」



女の子が靴を履くと、今度は靴とドレスの両方から光が放たれ、女の子の目の前に扉が現れました。



「その先にお母さまがいらっしゃるぞ。」



女の子はフクロウにお礼を言うと、ゆっくり扉をくぐりました。