日暮れ頃、ようやく仕事を終えた女の子が帰りますと、家の明かりがついておりません。



「お母さん、寝てるのかしら。」


女の子は明かりをつけて、家の中を見回しました。


しかし、母の姿は見当たりません。


机の上を見ると、置いてあったはずの手紙がなくなっておりました。



「大変。お母さんの身に何かあったらどうしよう…。」


女の子が急いで母を捜しに行こうとすると、突然、後ろから声が聞こえてきました。



「お急ぎですかな?」



見ると、身の丈120cm程になる小人が、腕を組んで立っております。


小人は毛むくじゃらな髭を触りながら言いました。


「お母さまをお捜しのようですな。」



女の子は小人に尋ねました。


「お母さんが何処にいるか、知っているの?」



すると小人は難しい顔をして言いました。


「今宵のパーティは貴女さまのために開かれた特別なもの。

貴女さまに参加して頂かなくてはならんのだよ。

そのためにはこうするより仕方がないと…。」


そしてそれっきり、俯いて黙り込んでしまいました。



女の子はどうしたら良いかわからず、小人を見つめました。


小人はしばらく難しい顔をしておりましたが、女の子の視線に気付くと慌てて言いました。


「私は貴女さまをパーティに連れてくるよう、仰せつかったのだ。

お母さまはすでにパーティに来ていらっしゃる。」



「パーティに行けばお母さんに会えるのね!」


女の子の喜びと安堵の入り混じった表情を見て、小人もややほっとした表情を浮かべました。


「パーティに行くためには、特別な方法で森に入らなくてはいけない。

どれ、私が案内するとしよう。」


小人はそう言うと、女の子を森の入り口まで連れて行きました。


そして女の子に向かって「静かに」の合図を送ると、何やら不思議な言葉を呟き、一番近くの木に触れました。



すると、静かな地響きが聞こえ、森の木々が移動し、あっという間に一本の道が現れました。



「さて、私の案内はここまでだ。」


そう言うと、小人はパッと光の粉になり、消えてしまいました。