二重螺旋の夏の夜

嘘をつくつもりなんてない、でも正直に言うのは気が引ける。

それはただ気恥ずかしいという理由によるものなのだが、そもそも本人にもまだ言ってないようなことをなぜこの場で発表しなきゃならないのだろうか。

でも結局話してしまうんだろうなぁ、俺は。

キリッとラインを引いたこの目に睨みつけられると、やましいことがなくてもたじろいでしまいそうになるって誰かが言ってたけど、その気持ち今ならとてもよくわかる。

仕方なく重い口を開いた。

「…失いたくないんだよ」

言ったあとに静かに深く呼吸をした。

井口は眉ひとつ動かない。

どこか怪訝そうに少し眉間にしわを寄せて、じっとこちらを見つめている。

「最初はお前の後輩だから面倒見てやろうって思ってたけど、気付いたらほっとけないって思うようになってた。いつでも笑ってて欲しいし、傷ついてるのは見たくない」

「それは同情?」

「いや、俺の傲慢」

「それは恋愛の『好き』だと解釈してもいいやつ?」

「…構わねぇよ、しかも本気のやつな」

もういいだろう。

半ば投げやりな気持ちでそう言うと、井口は静かに口角を釣り上げた。

その表情に疑問を抱きながら黙って待っていると、向かいに座る同期のおっさんは不意にスマートフォンを手に取った。

そして画面に向かって声をかける――