二重螺旋の夏の夜

俺は枝豆を一房取って、中の豆を押し出しながら当時を振り返ってみる。

「大学で同じ学科だったから顔合わせる機会も多くてさ」

「うん」

「会話の掴みに『髪切ったね』とか『そのピアス新しいやつ?』とか言ってたら、『細かいところまで気が付く男の人って素敵』と言われ」

「出た!好きだったところが嫌いになるっていう女の意味わかんない理屈!」

井口はおかしそうにけたけたと笑い出した。

お前も女だろうが、と言いたいのをぐっとこらえて、「そうだよな」と言っておいた。

「ま、それは置いといて、最近はどうなのよ」

「最近?」

急に話題の方向がぐっと変えられた。

「具体的に聞いてやろう。この前神崎とごはん食べに行っただろ」

「げ…」

なぜ知っている…。

井口はさらに続ける。

「さらにもっと前、わたしに神崎の好みを聞いてきただろう。あれは何」

「…その時お前教えてくれなかっただろ」

「神崎はみたらし団子と映画が好きだって言ってた」

「今さら!」

くまはセーフなのか、アウトなのか…?

「くまについては特に好きとも嫌いとも言ってなかったと思う」

…おい、全部知ってんのかよ。

何だかやり切れなくなって、おちょこの冷酒を一気に飲み干した。

それから席を立とうとすると、井口が咄嗟に俺の腕を掴む。

「逃げんのか」

「トイレだから」

メンチを切る井口の顔はまさに般若そのもので、こうなると対処には非常に骨が折れる。

「全部吐くまで帰さないから」

「わかってるよ、戻ってきたらちゃんと話すって」

よし、わかったと言って井口は俺の腕を解放した。

何となくそうかもしれないとは考えてはいたが、今日のメインはやはりこれだったか…。

歩きながら腰に手を当てて背中を反らすと、ぽき、と小さく音がした。