「あ、今?寝てる寝てる。まぁ起きてても全然しゃべんねぇけど。コミュニケーション取れねーよ、あはは!」

外は雨が降り始めたらしく、パラパラと壁に当たる雨粒の音が室内にも響く。

「あー、張り合いって言うかぁ、まぁ簡潔に言っちゃえば『つまらない』かな」

いつかの記憶――喫煙所から聞こえてきた会話が、フラッシュバックのようによみがえる。

『あの子といると気ぃ遣わなきゃなんないから疲れるわ。反応も薄いし』

『何で同じゼミなんかになっちゃったんだろー』

『でも面倒な調べものまとめるのとか、全部やってくれるからその点ラッキーだよね、わたしたち』

あのときは大丈夫だった。

何を言われても動じなかった。

最初から諦めていた。

でも今回は違う。

だって雅基はわたしの恋人で、大切な人で、必要で、一緒にいたくて、嫌われたくなくて、でもじゃあ、今のは何?

急に雨足が強くなって、音がザアザアに変化していた。

「んー、じゃあまた。連絡ちょうだいねー」

声が途切れて、居間と寝室を繋ぐ引き戸が開けられる音がした。

「あれぇ、爆睡じゃん、はは」

背中を向けていてよかった。

目から熱いものがどんどん溢れて枕に染み込んでいく。

でもほら、身内を下げて言うことって世の中でよくあるし、それと同じことかもしれない。

…でも、そう言わせている、そう思わせているわたしが悪いんだから、わたしが頑張れば――