わたしがいつまでも居候気分だったことには、荷物も結構関係しているのかもしれない。

というのも、自分のものはほとんどボストンバッグから出さずに生活していたからだ。

あれだけ処分をほのめかしたということは、雅基は部屋にわたしのものが置かれることをあまり望んでいないのだと思った。

だから部屋の隅のボストンバッグをもはや収納家具のように、もしくは唯一のわたしだけのスペースとして置いたままにして使ってきたし、雅基もそれについて何も言ってこなかった。



1ヶ月ほど前の金曜日、雅基は同僚の方と飲み会に行ったらしく、酔った状態で深夜1時頃に帰ってきた。

途中までは起きて待っていたのだが、眠くなってしまったわたしは、雅基が帰ってきたら起きようと思って寝室で仮眠をとっていた。

玄関のドアが閉める音で目覚めると、雅基の話し声がだんだん大きくなって聞こえてきた。

どうやら電話をしているらしく、陽気な声のトーンから考えて、相手は親しい間柄の人なのだろう。

電話が終わったら居間に行こう。

そう思って横になったままじっと待っていた。

「そうそう、それでさぁ。…え?だから俺の彼女の話ぃー」

結構べろべろに酔った状態でわたしの話をしているのか…。

何だか嬉しいようで照れくさいようで、思わず顔をほころばせてしまった。

「そう、そう。俺の言うこと何でも聞いてくれんの。ちょーラクよ」

でもそんな気持ちは一瞬で砕け散った。