「ねぇ・・・雫行かないでよ。」


雫の自宅前
7月あたりで、昼間より夜のほうが涼しく感じる

「はぁ・・・鬱陶しいって、ほっといて」

ぶっきらぼうに言い捨てた雫は歩き始める




なんだか・・・・



久しぶりに見た雫の背中は小さくて・・・・



さみしそうだった





追いかけることもなく
雫の背中を見送った後だった


ブーブー
着信を知らせるバイブ音が鳴った


「南部・・・・くん・・・・」

あたしの好きな人。
だけど届かない思い人


そんな思いをのみこんで
対応ボタンをタップした


「もしもし・・・・」


電話の奥に元気な声が響く


「あ、もしもしっ!朝比奈ちゃん???」

「うん、」


「雫・・・どう?俺の電話とか全然出てくんないの・・・」

少ししょんぼりした様子で言った
あたしは、このもやもやした気持ちを悟られないように

「雫・・元気だよ。夜、なかなか眠れないみたい・・・だけどね」

あ、やばい声震えた
ばれる・・・なんて思った時
何とも気づいていないようで、
安心したような、残念なような・・・・・

変わらない様子で

「そっか・・・うん・・・あ、俺・・・来週あたりやっとそっち戻れそうなんだ~入校テスト受かったし」


「あ、おめでとう!雫に言わなくていいの?」

「え、あいいよっ!あいつをびっくりさせたいから!」



明るく答えたその声に、曇りひとつ感じなかった

適当な雑談をした後電話を切った。

南部君は、雫のことではすごく感が回るんだけど
それ以外は全くダメダメで

誰よりも雫を愛してて・・・

雫はそんなの到底受け入れられないんだけど。